2011年10月23日日曜日

『月代兄弟怪異譚』



イラストを使った装丁をいくつか紹介します。
こちらは『月代兄弟怪異譚』(文芸社)。

妖術的能力を操る双子の美少年が活躍する小説です。
数年前刊行の本の新装版で、前の本もカバーは登場人物のイラストでしたが
今度はもう少し大人っぽくしたい、というオーダーで
新たにイラストレーターを探しました。
陰陽師風の衣装も描ける人…ということで宮川雄一さんにお願いしました。

美少年過ぎて女の子みたいになっても困る、
大人っぽ過ぎず子供っぽ過ぎず…という
微妙な注文になってしまい心配だったのですが、
艶かしい美女が上手な宮川さんの「双子の美少年」は
想像以上にキレイな仕上がり!
うっとりです(あ、そういう趣味じゃないですけども)
背景の色と月のモチーフはこちらで作り合成しました。

宮川さんの展示会と重なり制作時間の少ない仕事でしたが、
仕上がりは上々で、編集者共々満足の一冊でした。


2011年10月16日日曜日

『知性誕生』



今年3月に刊行された『知性誕生』(早川書房)の装丁を担当しました。
英国の脳科学者ジョン・ダンカン博士が書いた
「知性」についての本です。
「アタマの善し悪し」についての本、といってもいいかもしれませんが
なかなか微妙なテーマだし、未だにわからないことも多いですが
著者はときにイギリス人らしく(?)ちょっとアメリカ人を
皮肉ったりしながら知性の謎について迫っていきます。

ダイヤモンド・オンラインに著者のインタビューがアップされました。
http://diamond.jp/articles/-/13982
(会員登録しないと全部は見られないようですが)

カバーは最初、抽象的なイラストにしようと思っていたのですが
「脳」関連本の要素もあるのでわかりやすく脳のイメージを使いました。
科学物テイストを出すためにタイトルはドット文字で。
また、オビはギンガムというチェック模様の用紙ですが
遠目にはわかりにくいかも…クリックして拡大してみてください。














別丁扉もオビと同じギンガムの色違い。
表紙はグリーン系の特色でチェック模様に。



全体にグリーンでまとめ
花ぎれ、しおりもグリーン。
見返しはバランスをとってグレーにしました。
全体にあまりトンガリ過ぎないデザインを目指しました。


2011年9月30日金曜日

『それでもなお、人を愛しなさい』


少し前の本ですが、
昨年8月に刊行された『それでもなお、人を愛しなさい』(早川書房)、
8年前の本の新装改訂版です。

旧版はイラストが使われていて、自己啓発本らしい装丁だったのですが
新装にあたってビジネスパーソンにも届きやすい
すっきりとした装丁になりました。
表紙や見返し、別丁扉などは、オレンジ系でまとめました。

4月にTV番組で取り上げられて急遽オビを変えたのですが
こちらは黄緑色です。



内容は

「人は不合理で、わからず屋で、わがままな存在だ。
それでもなお、人を愛しなさい」

といった人生訓「逆説の10カ条」と、その解説の本です。
10カ条はマザー・テレサの孤児院の壁に書かれていて広まったのですが
作ったのはアメリカの19歳の学生です。
もともとは高校の自治活動のために書かれたその言葉が、
巡りめぐってマザー・テレサの心を動かし、
そして多くの人に届くことになりました。
日本でも本書の解説の佐々木常夫氏が著書で取り上げたり
勝間和代氏がブログで紹介したりしています。
25年前に書いた言葉が、時を経て大きく広がって戻ってきたことに
本人(著者)も不思議な感じを抱いたようですが
それだけ普遍性があり、速攻性はなくとも
伝播力の強い言葉なのだと思います。

この本も、ぜひロングテールで人の手に渡ってほしいと思います。

2011年9月25日日曜日

『不比等を操った女』

こちらは6月刊行の、古代史をめぐるミステリーを扱った
『不比等を操った女』(河出書房新社)です。

夕暮れの平城京をモチーフにミステリアスな雰囲気を出しつつ
県犬飼三千代という、女性がメインということで
カバーに和風の文様も敷いてみました。
表1では四隅にしかないのでわかりにくいですが。


表紙と別丁扉にもこの文様を使い
色使いはえんじ色〜サーモンピンクにしました。
歴史書の読者はかなり高年齢の男性率が高く
従来の読者に避けられないようにしつつ
それ以外の人にも手に取りやすいように、という
なかなか難しい狙いなのです。



2011年9月20日火曜日

『新版 富裕層の新納税術 海外タックス・プランニング』





















こちらはできあがったばかりの
『新版 富裕層の新納税術 海外タックス・プランニング』(総合法令出版)です。
2年前の本の改訂版で、税制や震災、株安など情勢の変化に
対応してバージョンアップしたものです。
実は装丁はほとんど同じ、「新版」がついたのと、
オビのテキストが変わっただけなのです。

いやいや同じだからって、手抜きじゃないですよ、もちろん!
前版がある程度認知されているので
あまり変化させない方がいいという理由です。
それだけ好評だったということで、うれしいですね。
六本木など都心の書店や、金融関係などに売れ行きがいいようです。

オビをとると、焦げ茶がしかれています。
この色は赤+スミなので、カバーはリーズナブルな2色印刷。
その分、オビは金+スミ+イエローと贅沢な色使いです。

それにしても、いつかこの本に書いてあることが
役立つような身分になりたいものだ…(遠い目で)





2011年9月16日金曜日

友田萌衣個展「1001分の10の星新一展」


「星新一」つながり、というわけでもないですがgallery DAZZLEの
友田萌衣さんの個展「1001分の10の星新一展」に行ってきました。

「星新一トリビュート展」と同じ星新一がテーマですが
こちらは、10の物語に挿絵のように絵をつけていくというもの。
友田さんの絵はまだ未分化のところもありましたが
星新一の世界を懸命に表現しようとしていました。
今回の作品は大学の卒業制作として
1冊の短編集にまとめたいとのことでした。

今後はイラストレーターを目指すという友田さん。
絵もさることながら、作品に対する取り組み方など
将来に期待が持てる点が多いと思います。
がんばって立派なイラストレーターになってください!


2011年9月5日月曜日

『他人の「アタマ」と「力」を使いこなしなさい!!』























人脈作りがテーマですが、新たな人脈作りよりも
いまある人脈をうまく「使いこなして」
成果を上げようというもの。

カバーは自分を中心に広がる人脈をイメージしました。
明るく軽いテイストで、とくに若手から中堅会社員に
手に取ってもらいやすさが狙いです。
かなり長いタイトルなので、うるさくなくまとめるのに苦労しました。
結局、一カ所にまとめてしまいましたが。


この本は、本文フォーマットも担当しました。
章扉が見開きになっているというのがポイント。
(章扉イラストは坂木浩子さん)











2011年9月3日土曜日

『「はい」と言わない大阪人』


























星新一トリビュート装丁展の作品をアップしようとしているのですが
点数も多く、なかなか進みません。
展示前はあんなにヒマだったのに、
終わったとたんに忙しくなってしまったこともあり…
言わけがましいですか。

かわりに、というわけではないけど
最近の仕事の作品をアップします。
昨年から今年にかけての作品を順次アップしていこうと思います。

まずはKKベストセラーズ刊『「はい」と言わない大阪人』
著者はわかぎゑふさん。
中島らもとお芝居をやっていた人…というざっくりしたイメージだったのですが
NHKの『リトル・チャロ』の原作者でもあるんですね。

POPとA3サイズのパネルも作りました。





















オビとこれで、内容がわかってもらえると思います。
素朴なイラストも本人で、中にもたくさん。
見開き完結のコラムスタイルなのですが
巻末に、東京の少年が大阪の親戚に2週間身を寄せる…
というラジオドラマのシナリオが載っていて
ちょっと泣かせます。

カバーは3色で、タッセルGAという
細かい編み目もようの風合いの紙を使いました。

この本、大阪ではけっこう反響があるようなのですが
どっちかというと大阪以外の人に読んでほしい
ものなんですけどね…

2011年7月28日木曜日

装丁展終了しました


星新一トリビュート装丁展、昨日終了いたしました。
ご来場いただいた方、ありがとうございました(^o^)v
予想を超える多さでした。
とまどいもあって対応がまずかったことも
あったかもしれません。
ご勘弁を〜

こういう展示は、デザイナー/イラストレーターの
来場が多いのですが、
今回は星新一ファンなど、
一般の方も多かったようです。
通りがかりの人もけっこういました。
そのため、書店で売っているものと勘違いする人も。
(きちんと説明しましたが)

後日サイトに作品写真をアップします。

しばらくは後片付けと、仕事と
新しいパソコンの設定に没頭します…

2011年7月26日火曜日

4日目、5日目ハードでした

展示5日目が終わりました。

4日目、5日目は
来場者が土日より多かったです。
なぜでしょうね?
特に夕方から終了までの間が多く
なるべく一人ひとりお話を聞くようにしてるので
終わる頃にはぐったりです。

ハードな理由はそれだけでなく、月曜にはなんと
ギャラリーの角での交通事故というのもありました。

ドン! という音がして、出てみたら
バイクの若者が倒れていて、足から出血が。
新聞配達のバイクと小さいバンの衝突事故です。
本人は大丈夫そうなそぶりでしたが
足腰がふらついていたので、救急車を呼びました。
到着を待つ間、バンの運転手のじいさんが若者に向かって
「そっちがぶつかってきたんだよな、お前が悪いよな」
と何度も言っていて、イヤな気分になりました。
まあ実際そうなのかもしれないけど
倒れている人間に言うことじゃないでしょ。

ギャラリーがヒマな時間でよかったです。
来てくれた方も、気になってしょうがないですからね。
小さな路地で見通しが悪く
時々事故があるんだそうです。
いつも通るところだから、気をつけなくちゃ。

5日目は来場者数がいままでで最高!
ということでハードでした。
ほとんど途切れなく来場者がありましたね。
でも、とっっっても残念なのは
仕事で抜け出していたときに来てくれた
知人・友人と話せなかったこと。
話した方とは内容がコアになることも多く、
楽しいのですが疲れも溜まってきました…

でも、残すところあと1日。
がんばります!

2011年7月24日日曜日

初「呼び込み」



しおりは大きく刷り、地道にカットしてます

3日目は日曜だったので、家族連れの方などもいました。

“呼び込み”をしてみました。
ギャラリーの前で道に迷っている風の
ご家族がいたので声をかけたところ
「人を待っています」というので
「では、中で星新一の本を見て待っててください」

成功しました。

というか実は、その家族のお母さんが
チラチラ看板を見ていたのです。
「じゃあチラ見していこうかな」
とあっさり入ってくれました。

星新一が好きだったみたいで、楽しめたようです。
子供さんたちも、しおりを持って帰りました。
これをきっかけに星新一を読んでね〜

こういうことがあると
ちょっと楽しいです。

そのしおりというのは、
展示作品の絵柄で作ったもので
来てくれた方に、お礼状代わりに差し上げています。
ペルーラというきれいな紙に印刷したものです。
ひとつだけ選んでもらっているのですが
そうすると急に真剣に見始める人もいます。

たかがしおりですが、持ち帰れるとなると
見方がちょっと変わるんですね。
自分が所有するとしたら…
という見方もいいと思います。
「鑑賞」ではなく、もっと身近なものになりますからね。

このしおりは、人気のバロメーターにもなっています。
一番人気は、もうすでに1/4くらいしか残っていません。
お気に入りをゲットしたい人は、お早めに(^o^)/

看板の字を大きくしておいて良かった~


展示2日目、23日に来てくださった方、
ありがとうございました

忙しい中、時間を作って来てくれた友人
お仕事でいつもお世話になっている方
Tokyo Art Beat を見て来てくれた人
朝日新聞のマリオンを見て来てくれたご夫婦
Jerryさんにおずおずとサインをお願いしたファンの男子
Jerryさんとニッコリ2ショットに収まったファンの女子
(そういうファンがいるってすごいですね)
自転車で通り過ぎたのに「あ、星新一!」と看板に気づいて
入ってくれたカップル
体験入学の合間に寄ってくれた、秋田から来た女子高生

ありがとうございます!

3日目突入、早い時間はものすごくヒマですが
ギターの練習でもしながら待ってます~

2011年7月22日金曜日

初日終了

星新一トリビュート装丁展、初日が終了しました。
(飲み会含めて)

来ていただいた方々、ありがとうございました。
する予定はなかったのに
最後はオープニングパーティみたいになりました。

久しぶりに英語オンリーでコミュニケーションをして
最後は1冊購入していただいたり

大先輩・W田さんに見ていただいて
軽くほめられたり

いろいろできていないところを
とりつくろったり

楽しく、疲れる一日でした。
明日もがんばります。

(でもオープニングパーティはもういいや
ゆっくり話せなくてつまらん)

2011年7月19日火曜日

問い合わせフォーム

この展示を企画したときに、関係者に許可を取るために
星新一公式サイトの問い合わせ窓口から連絡しようとしました。
そのページを見ると、
教育関係、出版、原作としての使用などいくつかにわかれ
さらに「入試問題への使用報告と二次利用・申請フォーム」
などいくつか決まったフォームに分かれています。
でも「展示会で使用する場合のフォーム」なんてないのです。
まあ、レアケースですよね、こんなの。

で、少し悩んだ末「朗読会/発表会・申請フォーム」から
問い合わせました。
「出版」の方が近いような気がするけど
小説をそのまま使うわけでもないし…
発表会って、展示会と少し近くないか? とか考えて。
その後、先方から連絡が来て話が通じ、とくに問題なかったわけですが
どのフォームに送るのが適切だったか、いまでもよくわかりません。


* * *


搬入してきました。
原画と並ぶと、文庫本は存在感がないですね…
でも、本の形になったものはいいですよ、やっぱり。
意外な問題点や、やり残したことがあるので
ぎりぎりですが、もうちょい頑張りますです!
では、会場でお待ちしています!

タイトルに悩む

「星新一トリビュート装丁展」という
タイトルに決まったのもいきさつがあります。

まず、展示の了解をいただいた新潮社の意向もあり
「新潮社文庫の展示会と勘違いされないようなタイトルを」
目指しました。
「星新一装丁展」だと和田誠さんや真鍋博さんの
装丁が並んでいると勘違いする人も、いそうですしね。

「星新一に捧ぐ〜オリジナル装丁展」という案ももらったのですが
「捧ぐ」がちょっと重いなあという気もしますし
「オリジナル装丁」という言葉で通じるのか?
というのも気になる。

「リメイク装丁」という言葉も一昨年の
一昨年ミステリー文庫展で使いましたが
これもわかりにくいと、評判がイマイチでした。

美術系だと「オマージュ」もありますが
わかりやすいとは言えないし
「星新一オマージュ装丁展」じゃ、落ち着かないし。

「星新一を装丁する」はわかりやすいけど、
ここでも使われているしなあ。

そのほか、ギャラリーの方と一緒に案を出しました。

星新一 もう一つの装丁展
星新一ショートショートにささげる装丁展
星新一作品をふたたび装丁する展
星新一作品を旅する装丁展
……などなど。
出品者同士で意見も出しましたが、まとまらず…

結局「トリビュートアルバム」という言葉も浸透していて
本人以外の誰かが新たに作り直したものなんだな、と
イメージしてもらえるだろうということで、
現状のタイトルになりました。
言葉のすわりもいいですし。

タイトルはふつうでいい、と思っていても
こういうちょっとひねった展示のときには
わかりやすさも重要で、難しいものですね。
これが決まらないと、サイトを作ったりハガキを作ったり
宣伝もできないわけで、けっこう苦労しました。

2011年7月18日月曜日

星新一トリビュート装丁展



星新一トリビュート装丁展

近々開催する「星新一トリビュート装丁展」に合わせて…
というわけでもないのですが、ブログを作ってみました。
仕事で装丁した本のことなど、書いていこうとおもいますが、
しばらくは目の前のイベントの
「星新一トリビュート装丁展」のことを。

開催4日前の今現在、準備はほぼ済んで
プリントの仕上がりを待つばかりなのですが
思い通りに行かないこともありました。

自分のミスもいくつかあり、やり直しも少々…
それはただ反省するばかりです。

しかし意外なトラブルもありました。
初めに12冊分のカバーをプリントを依頼し、
できたものを持って帰って
文庫に巻いてみるとほんの少し天地が短い。
計ってみるとほんの少し、0.5mmほどたりないのです。
しかし本の表紙が少しだけはみ出し、目立ってしまう
こまった0.5mmでもあるのです。

もちろん再プリントを頼みました。なぜそうなったかも。
そうしたら意外な答えが…
「1mm以下は適当に作る人が多いので
何も指示がなければ、断裁の時切り捨てています」
おいおい、何のためにトンボ付いてるの?
そのうえ
「仕上がり寸法の指示がなかったので、再プリント代もください」

怒りません、怒りませんよ、いきなりは。
でも引く気もないですよ。

そもそも仕上がりサイズを明記しろという指定もなく
0.5mm切り捨てるという事前の確認もなかった…
と主張して、もちろん無償でやり直しです。
当然ですが。

なにがあるかわかりませんね。
このあとは何もなく、無事開催できますよーに。

今後は開催までの道のりなども、書いていきます。