折原デザインの『海のハープ』と サンキューしおり
(装丁展のこれまで<8>からつづく)
展示方法についてはまず、ショートショート集の中の何編かを選び、それを表題作としてカバーを作るというアイデアが浮かんだ。
1冊の中にはたくさんの話があるので、絵にしやすいものを選べる。本を3人のイラストレーターに渡し、自由に選んでもらうことにする。
(元の表題作だけは入れることにした)
そして関係者に許可を取るため、星新一公式サイトにアクセスすると、新潮社の方から返事が届いた。権利のことは新潮社に任されているという。企画を説明し許可を得て、進行しながらチェックしていただいた。 許諾の手続きもしやすいので、展示で取り上げる本は新潮文庫の4冊にした。
担当は
折原=妄想銀行
タカセ=ボッコちゃん
北村=宇宙のあいさつ
JERRY=ご依頼の件
(すべて新潮文庫)
とした。
背の部分だけフォーマット化しただけで、表4も自由に使う。
ソデのラインナップでも遊ぶ。ネズミが一文字くわえて行った!
最終的にイラストレーター3人には、表題作+その中から選んだショートショート5作=計6作品を、絵にしてもらった。
ぼく自身も6作品を作り、全部で24作品。
装丁は全部ぼくがすることになるのだが、作品選びもそれぞれに委ねたため1冊ずつ丁寧にディレクションすることが難しい。仕上がった絵を見て装丁を考えることにした。
大変そうと思われるかもしれないが、3人ともさすがプロ、完成度の高い装画を描いてくれて、どう仕上げてもいいものになりそう! で装丁を考えるのも楽しかった。
表1の絵を表4やソデに展開。イラスト:JERRY
北村人さんがタイトルや著者名まで描いてくれたので、ソデや表4にちょっと遊びを入れる。
表4まで使って1枚の絵に。イラスト:タカセマサヒロ
このとき新潮社の方から、装丁の真鍋博さん、和田誠さんにもひとことお断りをした方がいい、とアドバイスをいただいた。
権利の問題があるわけではないが、 通常のカバーの上にかけて展示するわけなので礼儀としてごあいさつした方がということ。たしかに。
真鍋さんは亡くなっているのでご遺族にメールを送信。和田さんには書面を送り、後日電話でご説明し快諾いただいた。
和田さんには初日に来ていただいたのだが、「自分が装丁展をするなら村上春樹かな」とおっしゃっる。
いやいや、もういくつも村上作品を装丁してるじゃないですか、和田さん!
でも和田さんが発起人なら村上氏もOKしてくれるかもしれないし、その気になったらいつでも言ってくださいよ!
『海のハープ』では、テグスをカバーに編み込んだ
いままでの展示の来場者は、知り合いを除けばデザイン、イラスト、出版関係者がほとんどだが、このときは新聞の展覧会コーナーに掲載してもらったたためか、SFファン、展示会巡りが趣味の方など多いのが違いだった。
漫画家としての顔もあるJERRYさんは今回が初展示。目をキラキラさせたファンがやって来て、感激してサインをもらっていたのが印象的だった。会うだけで感激するひとがいるってスゴイ。
JERRYファンにとっても貴重な機会になってよかった。
図録ももちろん制作(右)左はDMポストカード
図録にはそれぞれが星新一のポートレトを。折原はなんとなく似てるということでトランプのイラストをチョイス。
暑い盛りに、男4人で暑苦しかったかもしれないが、楽しんでもらえたという確信もあり、充実した展示になった。
というわけで、この展示も無事に終わった。
そしてまた次回のことを考えねば…
今度はまた、デザイナーと一緒にやりたいなと漠然と思い、ぐるぐる考えつつ…
そして知り合いの「旅の本屋のまど」の店長と話しているうちに、そのアイデアは生まれてきた。
4回目にして、これまでとは全く違う構想ができあがっていった。
「本と旅」展だ。
(装丁展のこれまで<10>につづく)