2015年7月14日火曜日

装丁展のこれまで<9>星新一トリビュート装丁展(2011)B

 
折原デザインの『海のハープ』と  サンキューしおり

装丁展のこれまで<8>からつづく)

展示方法についてはまず、ショートショート集の中の何編かを選び、それを表題作としてカバーを作るというアイデアが浮かんだ。
1冊の中にはたくさんの話があるので、絵にしやすいものを選べる。本を3人のイラストレーターに渡し、自由に選んでもらうことにする。
(元の表題作だけは入れることにした)

そして関係者に許可を取るため、星新一公式サイトにアクセスすると、新潮社の方から返事が届いた。権利のことは新潮社に任されているという。企画を説明し許可を得て、進行しながらチェックしていただいた。 許諾の手続きもしやすいので、展示で取り上げる本は新潮文庫の4冊にした。
担当は

折原=妄想銀行
タカセ=ボッコちゃん
北村=宇宙のあいさつ
JERRY=ご依頼の件
(すべて新潮文庫)
とした。

背の部分だけフォーマット化しただけで、表4も自由に使う。

ソデのラインナップでも遊ぶ。ネズミが一文字くわえて行った!

最終的にイラストレーター3人には、表題作+その中から選んだショートショート5作=計6作品を、絵にしてもらった。
ぼく自身も6作品を作り、全部で24作品。

装丁は全部ぼくがすることになるのだが、作品選びもそれぞれに委ねたため1冊ずつ丁寧にディレクションすることが難しい。仕上がった絵を見て装丁を考えることにした。

大変そうと思われるかもしれないが、3人ともさすがプロ、完成度の高い装画を描いてくれて、どう仕上げてもいいものになりそう! で装丁を考えるのも楽しかった。



表1の絵を表4やソデに展開。イラスト:JERRY

北村人さんがタイトルや著者名まで描いてくれたので、ソデや表4にちょっと遊びを入れる。
 
 
表4まで使って1枚の絵に。イラスト:タカセマサヒロ

このとき新潮社の方から、装丁の真鍋博さん、和田誠さんにもひとことお断りをした方がいい、とアドバイスをいただいた。
権利の問題があるわけではないが、 通常のカバーの上にかけて展示するわけなので礼儀としてごあいさつした方がということ。たしかに。

真鍋さんは亡くなっているのでご遺族にメールを送信。和田さんには書面を送り、後日電話でご説明し快諾いただいた。

和田さんには初日に来ていただいたのだが、「自分が装丁展をするなら村上春樹かな」とおっしゃっる。
いやいや、もういくつも村上作品を装丁してるじゃないですか、和田さん!
でも和田さんが発起人なら村上氏もOKしてくれるかもしれないし、その気になったらいつでも言ってくださいよ!


折原デザイン『鍵』しおりに鍵のチャームを付けた


『海のハープ』では、テグスをカバーに編み込んだ


いままでの展示の来場者は、知り合いを除けばデザイン、イラスト、出版関係者がほとんどだが、このときは新聞の展覧会コーナーに掲載してもらったたためか、SFファン、展示会巡りが趣味の方など多いのが違いだった。
漫画家としての顔もあるJERRYさんは今回が初展示。目をキラキラさせたファンがやって来て、感激してサインをもらっていたのが印象的だった。会うだけで感激するひとがいるってスゴイ。
JERRYファンにとっても貴重な機会になってよかった。


図録ももちろん制作(右)左はDMポストカード

 
図録にはそれぞれが星新一のポートレトを。折原はなんとなく似てるということでトランプのイラストをチョイス。


暑い盛りに、男4人で暑苦しかったかもしれないが、楽しんでもらえたという確信もあり、充実した展示になった。

というわけで、この展示も無事に終わった。
そしてまた次回のことを考えねば…

今度はまた、デザイナーと一緒にやりたいなと漠然と思い、ぐるぐる考えつつ…

そして知り合いの「旅の本屋のまど」の店長と話しているうちに、そのアイデアは生まれてきた。
4回目にして、これまでとは全く違う構想ができあがっていった。

「本と旅」展だ。

(装丁展のこれまで<10>につづく)

2015年7月8日水曜日

装丁展のこれまで<8>星新一トリビュート装丁展(2011)A

 「星新一トリビュート装丁展」の作品4冊(右上から時計回りにイラスト:タカセマサヒロ、デザイン:折原カズヒロ、イラストJERRY、イラスト:北村人)

 (装丁展のこれまで<7>からつづく)


だいぶ間があいてしまいましたが「見えないタイトル」装丁展のつづきです。
 
ここまで2009年、10年とオーパ・ギャラリーで2年続けた装丁展。
ありがたいことにそれぞれ好評だったし、じゃあ、次は…?
となるけど、また同じコンセプトでやるのも難しいし…


そのとき、ふいに思いついたのが星新一だった。


だれもが一度は読んでいるかもしれない。

ぼくも一時は文庫本を読みあさった。あるとき飽きて離れたりするけど、また読みたくなって一気に読んだりする。
そんなことが何度かあった。

星新一作品は古くならない。
そのときどきの風俗や流行を扱わないからといわれている。
いつ読んでも面白いエヴァーグリーンな作品群。

星新一だけで展示するのもアリじゃないか。

星新一の装丁いえば、真鍋博さんと和田誠さんだ。

真鍋博装丁→『ボッコちゃん』(新潮文庫)
和田誠装丁→『宇宙のあいさつ』(新潮文庫)
ふたりとも装画も担当していて、星新一作品は絵のイメージが強い。 
ならば、全然別の装画を作ってみよう。

というわけで、個人的にこの人の星新一作品を見てみたい、と思った
3人のイラストレーターに声をかけた。

タカセマサヒロさん
北村人さん
JERRYさん

いずれ一緒になにかやってみたいと思っていた人たち。それぞれ人気者なのでどうだろうと思ったが、3人ともこころよくOKしてくれた。

今回は24作品を「遊星文庫」と名付け制作した。
まずは出来上がったものから。



タカセマサヒロさんの作品。
『包囲』はタイトルで絵を隠すのがもったいなかったので、大きな細い文字で上から載せた。



北村人さんの作品。
『タバコ』『宇宙の男たち』はタイトルも描いてくれた。 



JERRYさんの作品。
『バーであった男』はよく見ると男が自動車のハンドルを握っている。
1、2を争う人気作品だった。

 

折原の作品。
古いイラストなどで作った。
『海のハープ』のカラーのボーダーはマスキングテープを貼ったものをスキャンした。


全作品についてはこちらで→星新一トリビュート装丁展サイト


背はブルーグレーにしてタイトルやマークなどを組み込んだ 
 

ソデにはラインナップを

今回は星新一作品を扱うので関係者に許可をもらったり、真鍋博さんのご遺族や和田誠さんにも連絡するなど、デザイン以外に準備することも多かった。
そのあたりのことと、作品の制作についてはまた次回に。

(装丁展のこれまで<9>につづく)

2015年7月6日月曜日

『連邦国家ベルギー 繰り返される分裂危機』



松家秀哉=著『連邦国家ベルギー 繰り返される分裂危機』(吉田書店)
装丁を担当しました。

タイトル通りベルギーの政治について書かれた本です。
カバー写真はブリュッセルの中心地にある大広場、グラン=プラスです。
世界遺産にもなっているんですね。

「世界一美しい広場」といわれているそうで写真もキレイです。
キレイ過ぎて政治じゃなくて観光や紀行の本みたいにならないか
心配でタイトルは大きめに入れました。
文字色は鮮やかなコーラルレッドです。

カバー:ミルトGAスピリット/スーパーホワイト *グロスニス加工
表 紙:ビオトープGA-FS/アンバーレッド
オ ビ:コート紙
見返し:タント/L-53(サーモンピンク)



2015年7月5日日曜日

『日本語文法練習帳』




装丁を担当した
山田敏弘=著『日本語文法練習帳』(くろしお出版)です。


こちらは以前にも装丁を担当した
『国語教師が知っておきたい日本語文法』のワークブック編。



今回は判型がB5になりました。

このシリーズは好評ということで
ひらがなの短冊を並べ装丁のイメージをそろえました。

前作が赤系、前々作が青系でしたが、今回はトーンを
ペール〜ブライトにして、色はいくつかを混在させています。


表4には「にほんご」と並べてみたのでした。