2012年10月30日火曜日

『さかのぼり日本史』


シリーズものの装丁が続きます。
こちらは2011年の7月から1年をかけて刊行された
『NHK さかのぼり日本史』シリーズ全10巻(NHK出版)です。
第1巻は五百旗頭真=著『(1)戦後 経済大国の“漂流”』

ごらんのとおりNHKの番組「さかのぼり日本史」を書籍化したもの。
カバーまわりも本文組も全面的に担当し、がっつり取りくんだ作品です。

最初は大変でしたが、一度がっちり組み上げたのであとはスムーズでした。

番組タイトルバックにもあったのですが
カバーに階段を配して「さかのぼり」をイメージ。
白地にという要望があって、地色で変化をつけにくいということもあり
階段の色を10巻とも替えて、少し変化をつけました。
淡めの色で10パターンというのは、ちょっと難しかったです…


その分野の著名な先生が担当しているということで、著者名も大きめに。
サブタイトルよりも大きいんですよね。

シリーズ名や内容を表すキーワードがあったり、
表1はかなり要素てんこ盛りでした。

背文字の右に薄く色のついたツメを作って、
並べたときに色が昇るという遊びもありました。


どいういうわけか田舎の親戚ウケが異常に良く、送ってくれという要望が次々に…
(NHKは地方に強いってこと?)
「1冊980円×10巻」ということを忘れないでほしいけど嬉しいです、はい。

*現在は「外交編」が放送・刊行されていますが、そちらの書籍は担当していません。

2012年10月25日木曜日

『女性のための資格シリーズ 自力本願で税理士』ほか


こちらは7月に刊行された資格書
北川真貴=著『女性のための資格シリーズ 自力本願で税理士』(TAC出版)です。

女性のための資格シリーズとして他に3冊が出ています。
冨樫晶子=著『女性のための資格シリーズ 自力本願で社労士
松本明美=著『女性のための資格シリーズ 自力本願で行政書士
森江加代=著『女性のための資格シリーズ 自力本願でファイナンシャル・プランナー


このシリーズは単に資格案内にとどまらず、現職で活躍している女性著者たちが「なぜその資格を目指したか、どうやって勉強時間を作ったか、資格をどう生かしているか」を語っています。

結婚、妊娠や子育てなどを経ての資格取得への道のりには、同じ経験を持つ先輩のアドバイスが役に立つのではないでしょうか。
取得までの道のりだけでなく、組織に勤めるのか、独立開業を目指すのかといったことまで書かれていて、取得後のイメージもわきやすそうです。

とても読みやすいので、これらを目指す女性は初めに読むといいと思います。
(男性にも役に立つと思いますが)

装丁は、女性らしさを求められたのはもちろんですが、過剰なデザインは厳禁。
さじ加減は難しかったのですが、白を基調として色でポイントを作りうまく仕上げられたと思います。
タイトルの1文字を色でパーツ分けしたのは、編集者さんのアイデアでした。


2012年10月15日月曜日

『ビジュアル改訂版「マーケティング」の基本&実践力がイチから身につく本』ほか


こちらは8月に刊行になった
こちらのカバーまわりを担当しました。

改訂版ということで判型が四六判→A5判になり、タイトル通りビジュアル要素も追加され大幅に改訂されています。

カバーには章立てを刷り込み、キャッチコピーも小さく配し
机の上にあっても邪魔にならないような、ややおとなしめのデザインにしました。
テキスト本のようになりすぎないように、色使いや吹き出しなどちょっとだけ遊びも入れれています。

シンプルな色面構成メインの装丁は、実は採用になることが少ないのですが
今回はそれがオーダーでもあり、うまく形になりました。

2012年10月12日金曜日

『現在につづく昭和40年代激動文化』


少し前になりますが、今年はじめに刊行された伊達政保=著『現在につづく昭和40年代激動文化』の装丁です。

「激動文化」には、ラジカルとカルチャーを合わせて「ラジカルチャー」とルビがふられています。

この本は図書新聞に連載されているコラム「カルチャー・オン・ザ・ウェッジ」の97年から2011年までを中心に構成されたもの。映画、音楽(ジャズ・ロック・民謡・歌謡曲)、政治、暴力革命、アングラ演劇などをテーマに、現在と昭和40年代を行き来しながら論じています。
ソウル・フラワー・ユニオン、渋さ知らズ、平岡正明についての論考も。

世界的に政治や文化、社会の激動期であった60年代後半〜70年代前半を論じる場合、60年代とか70年代と区分することが多いですが、著者によると日本においては「昭和40年代」とくくるとスッキリするとのこと。
西暦だと1965年〜74年ですね。

自分はどちらかというと昭和50年代世代ですが、確かに影響はありますね。
その後の世代へのインパクトも大きかったと思います。
昭和50年代カルチャーは気軽に「あんなことあったよね〜」と言える感じですが、
昭和40年代はカルチャーのことを語るときも、政治や時代背景と切り離せない気がします。

カバーは動きを与えつつタイトルもスッキリと読ませたかったので、素直にヨコ組にしつつ斜めに配置。
スミとゴールドの2色です。
ルビの載ったタイトル下のラインは、表4からソデにかけて横断させました。




2012年10月10日水曜日

『イシュタム・コード』


こちらは小説の装丁です。
川口祐海=『イシュタム・コード』(文芸社文庫)。

ストーリーはへたに紹介するより公式のあらすじを載せた方が良さそうです。

ユウの周りで相次ぐ子どもたちの自殺。いつしかそれは地球規模の広がりを見せてゆく。はたして本当に自殺なのか、それとも新たな伝染病? 自殺者数が加速的に増える中、成長したユウが突き止めた驚愕の計画とは? そこには行方知れずの父の、人生を賭けた闘いが隠されていた! 壮大なスケールでユウの青春と活躍を描くファンタジック・ミステリー。

「謎の自殺」「驚愕の計画」などハードな展開の話に見えますが、少年が主人公の青春物といった雰囲気です。ファンタジー、ミステリー以外にSF的な要素も強く、分類しづらいところもありますね。
最初は若者向けのライトな物語かと思ったのですが、後半はどんどん別の展開になって楽しめました。
WorLDというfacebookとセカンドライフとインターネットを合わせたような仮想空間が出てきたり、現実と重ね合わせて見ることも。

カバーはコミックキャラクターのようなイラストで、というオーダー。
イラストというより漫画の絵に近く、自分が普段よく見るタイプの絵ではないため悩んだのですが、漫画/イラストを描いている神山アキコさんに発注しました。
一応、絵に色をつけてもらったのですが、全体のデザインと合わせて色も調整するため、線/ベストとネクタイ/ズボンやスカート…とレイヤーを分けて描くようお願いしました。
実際、はじめの色とかなり変わっています。

タイトルは既製のフォントに少し手を加え、さわやかな色で絵に重ねました。


本が完成したあと、ちょっとした偶然が判明。

ちょうど同時期に手がけていた文庫『小説東のエデン』『小説東のエデン劇場版』。(詳しくはこちら
人気アニメ監督の神山健治さんが著者なのですが、神山アキコさんとは兄妹だということがわかりました。
そんなことは知らず(まあ当然ですが)絵柄を見て発注したのですが、まったく同じ時期に関わっていたとは。絵を描く人はたくさんいるのに。
だからどうだというわけでもないですけど、軽いシンクロニシティということで…


『小説 東のエデン』『小説 東のエデン 劇場版』


以前装丁した単行本が文庫になりました。
神山健治=著『小説 東のエデン』『小説 東のエデン 劇場版』MF文庫ダ・ヴィンチ)です。

人気アニメ『東のエデン』を、原作・脚本・監督の神山健治さんが自ら小説化したものです。
あらゆる願いを叶えるノブレス携帯と100億円を託され12人のセレソンに課されたのは「日本を救う」こと…ストーリーだけ聞くと荒唐無稽なお子様アニメか?とも感じますが、希望を持ちにくい今の日本の空気をとらえたマニア向けにとどまらない作品です。

文庫は単行本のデザインを引き継ぎ、細かい調整をしたのみです。
単行本の装丁のときには、アニメのロゴタイプは使わず小説らしい文字使いを、ということで筑紫明朝でタイトルを組みました。
装画はもちろん、アニメのキャラクター原案を担当した羽海野チカさんです。


同時期にデザイン作業をしていた『イシュタム・コード』との小さな偶然が。
それについてはこちらで→『イシュタム・コード』