2012年12月27日木曜日

『トートロジーの意味を構築する』


こちらは12月に刊行された書籍です。

トートロジーとは「同語反復文」のこと。
「猫は猫だ」とか「イチローはイチローだ」など、普段よく使う言い回しです。

ひさしぶりにイチローがヒットを放った。
「やっぱりイチローはイチローだなあ」

と言われると「そうだねえ」と言いますよね。
よく考えると「イチローはイチローだ」は文としては変ですよね。イチローはイチローなのは分かりきったことだから。
でも「イチローってすごいなあ」というその意味は伝わりますね。
じゃあなぜわざわざ、そんな言い方をするのか…

というところから本書のトートロジー論が始まります。
ふだん言語学の本を装丁することがあっても、専門的で難しいことが多く
読めないことが多いのですが、この本は読みたくなる出だしです。

アマゾンでも絶賛のコメントがついているようですね。


著者の希望で、カバーにモジリアーニ「大きな帽子をかぶったジャンヌ・エビュテルヌ」を使いました。
著者はパリで本書に書かれているトートロジー論の着想を得た当時、モジリアーニ展に行ったそうです。
そのときにフィガロ紙の記事のキャプションに「アーモンドみたいだけど、目は目だ」(モディリアーニはそのワンパターンなスタイル(アーモンドみたいな目)ゆえに批判されてきたが、だからと言ってモデルの個性が損なわれはしない)とあったそうです。
そう、トートロジーですね。
それでモジリアーニを使うことになったのです。 
カバーソデにその文章を入れました。


でもこの絵を単純に据えただけでは、顔にばかり注意が向かってしまい、美術の本に見えてしまうという危険も。
なのでデザインで工夫してほしい、というオーダーが届いたのですが
絵そのものを加工するわけにもいかないし…

というわけで考えたのが、絵を中心付近でトリミングして繰り返すことです。
「絵が主役」じゃなく見せつつ、なおかつトートロジー=同語反復文をイメージさせるという方法でした。
中心付近でトリミングすると絵としては不安定になり、主役にならないだろう発想でした。
そのぶん小さいながらタイトルも引き立ち、いい仕上がりになったと思います。

用紙
カバー:MTA+ FS *グロスPP加工
オ ビ:パミス/純白/四六判Y目100kg
表 紙:アラベール/ウルトラホワイト/四六判Y目110kg
見返し:新星物語/チャコール/四六判Y目110kg



2012年12月23日日曜日

カンバセーション「横尾忠則×和田誠」



先日、横尾忠則×和田誠のトークショーに行ってきました。これは「田中一光とデザインの前後左右」という展示の関連プログラムとして行われたもの。

http://www.2121designsight.jp/program/ikko_tanaka/events/121215.html

横尾さんと和田さんは同じ年なんですね。
駆け出しのころ、横尾さんはイラストレーター・デザイナーとして、和田さんは部下として田中一光さんと関わっていたとのこと。

二人の口からは、「一光さんに怒られた」という話のオンパレード。喫茶店で「珈琲でいいです」と言っては怒られ、灘本さんに軽口をきいたといっては怒られ…
しかし嫌な思い出ではなさそうで、楽しそうに話していました。
「こういう話ができるのも一光さんならではだなあ」とお二人は言っていました。
もちろん絵やデザインの話もたくさん。

とにかく印象に残ったのは横尾さんの天然ぶり。
笑わせようとはいっさいしていないのに、笑うしかないトーク。
爆笑の渦でした。なんなんでしょうか、あれは。
もちろん相手が旧知の和田さんということもあったでしょうが。
気難しそうなイメージがあったのに、完全に覆りました。
和田さんもちょっとおいていかれてましたね。

終わりの時間が迫り司会者が「ではそろそろ締めの時間と…」というと
「え? 一光さんのこともっと話さなくていいの? いろいろあるよ」
「では最後にひとつお願いします」
「いきなり言われても思いつかないよ、なにかヒントがないと」
…おいおい。

しかしその話が面白く、和田さんも負けじと一光さんのエピソードを繰り出し、さらに横尾さんも…と、終わった頃には90分の予定を30分近くもオーバーしていました。

とても楽しくためになるトークでした。
(もちろん展示も)
誘ってくれたイラストレーターのOさん、ありがとう!

2012年12月19日水曜日

『勝率90%超の選挙プランナーがはじめて明かす!心をつかむ力』



選挙が終わりましたね。
あまり期待の持てなそうな結果に個人的には残念なのですが、じゃあどうなったら良かったのかと言われるとこれまたいい答えがないという、行列に並んで投票したのになんともやりきれない選挙でした。

2年ほど前の本ですが、選挙つながりで紹介します。

著者は、石原慎太郎都知事や森田健作千葉県知事などの選挙を手がけた「選挙プランナー」。
キムタクのドラマ『CHANGE』の指導もしたそうです。

内容は選挙に出る人のためのノウハウというわけではなく、ふだんの仕事や生活に役に立つ「心をつかむ」術について。(まあ選挙に出る人は多くないですからね)
「選挙戦でこういう方法を使うのか」と知れば、惑わされずにすむかも知れません。

カバーは、文字のみで構成。
色は焦げ茶(DIC2429)+イエロー+バーコード用のスミの3色。
焦げ茶はスミでもよかったけど、怪しすぎるかもということでナシに。
でも「心をつかむ」というタイトルにはそこはかとなく怪しさもあって、そのイメージを利用して目を引きたいという目的もあり、あえて明るく・さわやかな感じにはしませんでした。
マットPP加工でやや落ち着きを持たせました。

 

本文組もデザインしました。


まとめのマークと章扉はたすきのイメージで。


中のイラストは江口修平さん。


第5章「人の心をつかむために演じきる」
自分にはなかなかムズカしそうです。

2012年12月3日月曜日

「信頼と裏切り」尾道市立大学美術学科 特別講演



尾道市立大学で「信頼と裏切り 〜編集者がデザイナーに求めること〜」と題した講演をしました。

これは通常の講義とは別に、実際に働く人が制作現場での経験を話すというもので、美術学科教授に就任した野崎眞澄さんが企画したもの。

野崎さんが旧知の日経BP社編集者・柳田俊彦さんと(ついでに)私にも声をかけてくださって、特別講演プロジェクトの第1回めとして行うことになったのです。
「初回で今後の成り行きが決まるから、よろしくね」
…ってプレッシャーかけすぎですよ、野崎さん。
いつのまにかポスターできてるし。

今回よばれた私たちは、書籍編集とブックデザイナーの現場を話しました。
「信頼と裏切り」というタイトルで柳田さんがアウトラインを作ってくれました。
編集者が何を求めてデザイナーに発注するのか、デザイナーはそれにどうやって応えるのか。ラフ案と出来上がった本など実例を見せながら話します。

「信頼と裏切り」というのはちょっと刺激的なタイトルですよね。
裏切られたら困るでしょ…とかふつう思うし。
もちろん聞けば納得の話です。

リハーサルをやり、直前まで内容を手直ししたり、昨年ギャラリーダズルで展示をした卒業生の友田萌衣さんにアドバイスを求めたりして準備を整えました。

行ってみると大きな教室。次々に学生さんが集まり100人ほどに。
このくらいの人を前にするとやっぱり緊張しますね。
思ったように話せないし、進行を間違えるし。
もっと具体的に話せばよかったとか、反省しきりです。
それでもまあ、少しでもどこかに残って、あるときふと思い出してくれたらいいなと思います。

そして夜は、野崎教授をはじめ美術学科の教授の方々と宴会に。
そういうときにありがちな「それ学生に聞かせてやりたかった〜」という面白い話が出て来たりして。
あとの祭りってやつですな…

翌日は夕方近くまで尾道を散策して帰りました。
(そのときのことはまた後日)
話には聞いていましたが、いいところでした。
坂道で膝をやられましたが。
神様ですよ、エレベーターとエスカレーターを作った人は、ええ。

それにしても、めったにない経験でした。
自分としてもデザインのことを考え直す機会になり、尾道を訪れることができたのもよかったです。

機会をくださった野崎教授と尾道市立大学のみなさまに感謝です!


2012年11月28日水曜日

『音声文法』


2011年3月刊行と少し前の本を紹介します。
杉藤美代子=編『音声文法』(くろしお出版)です。

なぜこの本をいまさら紹介するかと言えば、そいういえば思いがけずレトロでかわいらしいものができたことがあったなと、思い出したからというだけなんですが。

オビを外すとこんな感じ。




花や星がどこかにあったら、レトロポップな本に見えなくもない?

言語学の専門書で、私が分かりやすく説明することはできませんが
「音声」の本なので「話す人」のイメージがあってもいい、ということで横顔のシルエットを作ったのです。
女性向けの本ではもちろんないので、シルエットが女性に見えないように注意したつもりですが、右の茶色の角Rや色使いなど柔らかい雰囲気でそう見えるかも…?

欧文がかなり大きいのですが、そういうオーダーなのでした。

表4にもちょこっと。



まあジャケ買いされるような本では、ないんですけどね。

2012年11月22日木曜日

『誰もがイライラしたくないのに、なぜイライラしてしまうのか?』



11月刊行の新刊です。
ジョー・パルカ&フローラ・リクトマン =著、黒木 章人=訳『誰もがイライラしたくないのに、なぜイライラしてしまうのか?』(総合法令出版)
タイトルがいいですね。
つい内容を知りたくなってしまいます。

他人の携帯電話はなぜイライラするのか?
黒板をツメで引っかく音は?

そんなイライラをまじめに追求している本です。
トウガラシが最初は辛くても次第に美味しく感じてしまうような現象を
「良性マゾヒズム」というそうで、何となく気に入りました。
動物にはないらしい。
そりゃそうだ。

詳しくはこちらへ。

装丁へのオーダーは、まずはスッキリ明るめの色合いというもの。
イライラの追求というある意味軽妙なテーマですが
単なるトリビア本とはちがい、科学的に解析した本なので、
軽過ぎてもNG。

写真を加工して使用したのは、編集者さんの案。
いくつか写真を探し、組み合わせてみたりもしたのですが
この写真に落ち着きました。
頭上のぐるぐるっとした線はマウスで描きました。

タイトルは少しくだけた雰囲気にしたくて
フォントワークスのロダンNTLGというフォントを採用。




全体に赤/黄/白を中心にした軽めの色合いを
見返しの濃い紺色で引き締めました。

・カバー:コート紙
・サイタン/ハイホワイト/四六判Y目100kg
・表紙:アラベール/ホワイト
・見返し:サイタン/ネイビー
・別丁扉:エコジャパンR/たんぽぽ

これを読めばイライラすることがなくなる…
というわけではなさそうですが、少しは心に余裕ができるかも。
ぜひ!

2012年11月15日木曜日

『 子育て☆夢育て処方箋』


こちらは3月に刊行の菅原亜樹子・真船貴代子=著『子育て☆夢育て処方箋』( 明治書院)です。

若者たちが「夢」を抱き「明るい未来」を創り出せるように、様々な活動をしている「夢さがしプロジェクト」のおふたりが、子育てに悩むお母さん・お父さんに贈る“処方箋”として書いた本です。

前半は様々な世界のトップランナーたちの仕事・人生観と若者へのメッセージ。
羽生善治・織作峰子・北嶋康介・坂本龍一など有名人から、看護士、CMプランナー、翻訳家など多様な人選です。

後半は夢さがしプロジェクトの講演会やワークショップなどの活動の紹介と、子育ての悩みへの処方箋という構成。
「職業人なりきりインタビューゲーム」というユニークな活動もありました。


装丁への要望は「子育て中の若い母親が手にしても恥ずかしくないようなオシャレなカバー」というもの。
でも、スタイリッシュで親しみがわかなくてもダメだし、はじけ過ぎて誠実さが感じられなくてもダメと、けっこうむずかしい。

読者層は30〜40代の女性が中心ということで
その年代向けの女性誌を見てみました。

そして考えました…ピンクだろうやっぱり。

で、ピンクと、処方箋をイメージした四角をキーにデザインができました。


できれば女性誌の表紙のようにマゼンタだけ特色を使いたかったのですが、折り返しに著者のカラー写真があり断念しました。
(特色が人物写真に影響を与えるため。5色は予算的にナシで)

でもこれはこれで落ち着いた感じで子育て本にはよかったかも。

本文デザインも全面的に作りました。
処方箋アイコンは、ただの四角い紙みたいになってしまいましたが。






2012年11月8日木曜日

『ITパスポート合格講座』


矢沢久雄 =監修、日経パソコン=編集『ITパスポート合格講座』(日経BP社)
の装丁を担当しました。

こちらは昨年、一昨年と刊行されていた同様の本のリニューアル版。
ITパスポートはこの系統の中では一番難易度の低い試験で、受験する人も学生や若い人が多く、優しく分かりやすそうなイメージを強調することになりました。

カバーまわりだけでなく本文デザインも担当しています。
前2作もカバーを担当したのですが、今回はキャラクターのカンガルーも含めて一新しようということになりました。

というわけで、カンガルーの新キャラをイラストレーターの村山宇希さんに作ってもらいました。
元のキャラはかわいく優しいイメージでしたが、今回はちょっと脱力系なガルーにしてもらいました。

本文中でも登場します。


本を持つガルーが気に入っています。


カバーにはあまり情報を盛り込まずスッキリと。
ガルー親子とポケットのイメージで作りました。
本文用紙や2色の刷色を前回と変えるなど、より気軽なイメージになっています。
ITパスポート試験を目指す方、この本で合格に突き進んでください!

2012年11月1日木曜日

『神は数学者か?』


こちらは1年ほど前に刊行されたものですが、
マリオ・リヴィオ=著『神は数学者か?』(早川書房)です。

ポピュラー・サイエンスと呼ばれる分野の本で、
数学は人間が作り出したものなのになぜこんなにいろんな現象を説明できるのか、宇宙はまるで数学者が作ったんじゃないか…というようなことが書かれています。
原題もそのまま「Is God A Mathematician ?」

編集者のアイデアで、ウィリアム・ブレイクの『ニュートン』の絵をトリミングして使いました。

「神」ということで表1に十字を作り、そこにタイトルを載せました。
タイトルの並び方に一瞬「ん?」となるでしょうか。
ま、でも読めるでしょ?
(ヨコ組5行のタイトルと思ってください)

背も少しだけ十字に見えるようになっています。
さすがにこっちのタイトルは表1と同じ並びにはできなかった…


カバー:ヴァンヌーボVG/スノーホワイト *艶ニス加工
オ ビ:コート紙
表 紙:アラベール/ウルトラホワイト
別丁扉:タントセレクトTS-7/N-8
見返し:アラベール/スレートブルー

この著者の本を担当するのは3冊目で、
過去の2冊も同じくポピュラー・サイエンスの本でした。


最初の『黄金比はすべてを美しくするか?』がこの分野としてはヒットとなり何度か増刷されました。
現在は文庫も出ています。(文庫の装丁は担当ではありません)



展示「カンテンブックス」

タンバリンギャラリーで開催中(〜11/4まで)の展示「カンテンブックス」に行きました。


kantendm.jpg

こちらはグループ展で、空想書店という設定で6人のイラストレーターが自分の絵で作った本を並べています。それぞれ自分が好きな分野の本を、自分たちで装丁までしています。手書きのタイトルなどを見ていると、こちらも熱が伝わってきます。
書皮があったりして書店らしさを演出しているところもナイスです。

当番をしていた古谷充子さんが作ったのはこけしの本。
彼女がこけしを見に足を運んだのは、私の故郷秋田県(&山形、福島)。
ものすごく話が通じてびっくり!

そこに両親が秋田出身というギャラリーオーナーが加わり、さらに山形生まれの青山タルトさんが現れ、すっかり東北濃度が上がり話が盛り上がりました。

書皮セットと、古谷さんのこけしを中心にした東北紀行の冊子を購入しました。


展示:那須慶子個展「MUSICIANS」

最近見た展示です。
那須慶子個展「MUSICIANS」(HBギャラリー)。

60〜90年代のロックミュージシャンのポートレイトが那須さんのキレイなタッチで並んでいました。


デヴィッド・ボウイを中心としたツリーの絵があり、那須さんがすべてを説明してくれて、なんだかロックの先生みたい。
(80年代の音楽はあまりお気に召さないようで、そのあたりがないのが個人的には残念なのですが)



那須さんのロック愛(特にボウイ愛)が伝わってきて嬉しくなりました。
自分もファンなので、昔の雑誌など引っ張り出して見せびらかしました^^

ボウイの絵が1点しかなかったのでもっとあればいいのに、とか
ポートレイトだけじゃなくてなにかロックを表現したものも見てみたい、とか
いろいろわがままを言いたくなるのも、熱が伝わってくるからかな。
次回を楽しみにしています!

2012年10月30日火曜日

『さかのぼり日本史』


シリーズものの装丁が続きます。
こちらは2011年の7月から1年をかけて刊行された
『NHK さかのぼり日本史』シリーズ全10巻(NHK出版)です。
第1巻は五百旗頭真=著『(1)戦後 経済大国の“漂流”』

ごらんのとおりNHKの番組「さかのぼり日本史」を書籍化したもの。
カバーまわりも本文組も全面的に担当し、がっつり取りくんだ作品です。

最初は大変でしたが、一度がっちり組み上げたのであとはスムーズでした。

番組タイトルバックにもあったのですが
カバーに階段を配して「さかのぼり」をイメージ。
白地にという要望があって、地色で変化をつけにくいということもあり
階段の色を10巻とも替えて、少し変化をつけました。
淡めの色で10パターンというのは、ちょっと難しかったです…


その分野の著名な先生が担当しているということで、著者名も大きめに。
サブタイトルよりも大きいんですよね。

シリーズ名や内容を表すキーワードがあったり、
表1はかなり要素てんこ盛りでした。

背文字の右に薄く色のついたツメを作って、
並べたときに色が昇るという遊びもありました。


どいういうわけか田舎の親戚ウケが異常に良く、送ってくれという要望が次々に…
(NHKは地方に強いってこと?)
「1冊980円×10巻」ということを忘れないでほしいけど嬉しいです、はい。

*現在は「外交編」が放送・刊行されていますが、そちらの書籍は担当していません。

2012年10月25日木曜日

『女性のための資格シリーズ 自力本願で税理士』ほか


こちらは7月に刊行された資格書
北川真貴=著『女性のための資格シリーズ 自力本願で税理士』(TAC出版)です。

女性のための資格シリーズとして他に3冊が出ています。
冨樫晶子=著『女性のための資格シリーズ 自力本願で社労士
松本明美=著『女性のための資格シリーズ 自力本願で行政書士
森江加代=著『女性のための資格シリーズ 自力本願でファイナンシャル・プランナー


このシリーズは単に資格案内にとどまらず、現職で活躍している女性著者たちが「なぜその資格を目指したか、どうやって勉強時間を作ったか、資格をどう生かしているか」を語っています。

結婚、妊娠や子育てなどを経ての資格取得への道のりには、同じ経験を持つ先輩のアドバイスが役に立つのではないでしょうか。
取得までの道のりだけでなく、組織に勤めるのか、独立開業を目指すのかといったことまで書かれていて、取得後のイメージもわきやすそうです。

とても読みやすいので、これらを目指す女性は初めに読むといいと思います。
(男性にも役に立つと思いますが)

装丁は、女性らしさを求められたのはもちろんですが、過剰なデザインは厳禁。
さじ加減は難しかったのですが、白を基調として色でポイントを作りうまく仕上げられたと思います。
タイトルの1文字を色でパーツ分けしたのは、編集者さんのアイデアでした。


2012年10月15日月曜日

『ビジュアル改訂版「マーケティング」の基本&実践力がイチから身につく本』ほか


こちらは8月に刊行になった
こちらのカバーまわりを担当しました。

改訂版ということで判型が四六判→A5判になり、タイトル通りビジュアル要素も追加され大幅に改訂されています。

カバーには章立てを刷り込み、キャッチコピーも小さく配し
机の上にあっても邪魔にならないような、ややおとなしめのデザインにしました。
テキスト本のようになりすぎないように、色使いや吹き出しなどちょっとだけ遊びも入れれています。

シンプルな色面構成メインの装丁は、実は採用になることが少ないのですが
今回はそれがオーダーでもあり、うまく形になりました。

2012年10月12日金曜日

『現在につづく昭和40年代激動文化』


少し前になりますが、今年はじめに刊行された伊達政保=著『現在につづく昭和40年代激動文化』の装丁です。

「激動文化」には、ラジカルとカルチャーを合わせて「ラジカルチャー」とルビがふられています。

この本は図書新聞に連載されているコラム「カルチャー・オン・ザ・ウェッジ」の97年から2011年までを中心に構成されたもの。映画、音楽(ジャズ・ロック・民謡・歌謡曲)、政治、暴力革命、アングラ演劇などをテーマに、現在と昭和40年代を行き来しながら論じています。
ソウル・フラワー・ユニオン、渋さ知らズ、平岡正明についての論考も。

世界的に政治や文化、社会の激動期であった60年代後半〜70年代前半を論じる場合、60年代とか70年代と区分することが多いですが、著者によると日本においては「昭和40年代」とくくるとスッキリするとのこと。
西暦だと1965年〜74年ですね。

自分はどちらかというと昭和50年代世代ですが、確かに影響はありますね。
その後の世代へのインパクトも大きかったと思います。
昭和50年代カルチャーは気軽に「あんなことあったよね〜」と言える感じですが、
昭和40年代はカルチャーのことを語るときも、政治や時代背景と切り離せない気がします。

カバーは動きを与えつつタイトルもスッキリと読ませたかったので、素直にヨコ組にしつつ斜めに配置。
スミとゴールドの2色です。
ルビの載ったタイトル下のラインは、表4からソデにかけて横断させました。




2012年10月10日水曜日

『イシュタム・コード』


こちらは小説の装丁です。
川口祐海=『イシュタム・コード』(文芸社文庫)。

ストーリーはへたに紹介するより公式のあらすじを載せた方が良さそうです。

ユウの周りで相次ぐ子どもたちの自殺。いつしかそれは地球規模の広がりを見せてゆく。はたして本当に自殺なのか、それとも新たな伝染病? 自殺者数が加速的に増える中、成長したユウが突き止めた驚愕の計画とは? そこには行方知れずの父の、人生を賭けた闘いが隠されていた! 壮大なスケールでユウの青春と活躍を描くファンタジック・ミステリー。

「謎の自殺」「驚愕の計画」などハードな展開の話に見えますが、少年が主人公の青春物といった雰囲気です。ファンタジー、ミステリー以外にSF的な要素も強く、分類しづらいところもありますね。
最初は若者向けのライトな物語かと思ったのですが、後半はどんどん別の展開になって楽しめました。
WorLDというfacebookとセカンドライフとインターネットを合わせたような仮想空間が出てきたり、現実と重ね合わせて見ることも。

カバーはコミックキャラクターのようなイラストで、というオーダー。
イラストというより漫画の絵に近く、自分が普段よく見るタイプの絵ではないため悩んだのですが、漫画/イラストを描いている神山アキコさんに発注しました。
一応、絵に色をつけてもらったのですが、全体のデザインと合わせて色も調整するため、線/ベストとネクタイ/ズボンやスカート…とレイヤーを分けて描くようお願いしました。
実際、はじめの色とかなり変わっています。

タイトルは既製のフォントに少し手を加え、さわやかな色で絵に重ねました。


本が完成したあと、ちょっとした偶然が判明。

ちょうど同時期に手がけていた文庫『小説東のエデン』『小説東のエデン劇場版』。(詳しくはこちら
人気アニメ監督の神山健治さんが著者なのですが、神山アキコさんとは兄妹だということがわかりました。
そんなことは知らず(まあ当然ですが)絵柄を見て発注したのですが、まったく同じ時期に関わっていたとは。絵を描く人はたくさんいるのに。
だからどうだというわけでもないですけど、軽いシンクロニシティということで…


『小説 東のエデン』『小説 東のエデン 劇場版』


以前装丁した単行本が文庫になりました。
神山健治=著『小説 東のエデン』『小説 東のエデン 劇場版』MF文庫ダ・ヴィンチ)です。

人気アニメ『東のエデン』を、原作・脚本・監督の神山健治さんが自ら小説化したものです。
あらゆる願いを叶えるノブレス携帯と100億円を託され12人のセレソンに課されたのは「日本を救う」こと…ストーリーだけ聞くと荒唐無稽なお子様アニメか?とも感じますが、希望を持ちにくい今の日本の空気をとらえたマニア向けにとどまらない作品です。

文庫は単行本のデザインを引き継ぎ、細かい調整をしたのみです。
単行本の装丁のときには、アニメのロゴタイプは使わず小説らしい文字使いを、ということで筑紫明朝でタイトルを組みました。
装画はもちろん、アニメのキャラクター原案を担当した羽海野チカさんです。


同時期にデザイン作業をしていた『イシュタム・コード』との小さな偶然が。
それについてはこちらで→『イシュタム・コード』

2012年9月28日金曜日

「日本語文法学会」ポスター


たまには装丁以外の仕事もしています。

こちらは10月に開催される日本語文法学会の告知ポスターです。
毎年この時期に開催されていますが、ここ4年ほどポスターをデザインさせていただいています。

きちんとスケジュールを読んでもらわなくてはいけないのでそこは押さえつつ、毎回背景などで変化をつけています。
今回はいくつか画像を重ね合わせたりぼかしたりしながら、あれこれやっているうちにまとまりました。

毎回思うのですが、こういう専門分野のテーマは外から見ると不思議な感じのものが多いですね。

『「タイ料理はおいしくて、辛い」はなぜ不自然か』

そりゃもっとおいしい店に行った方がいいですよ…
って、文法の話ですか。

「子どものための『ケータイ』ルールブック」


目代純平=著「子どものための『ケータイ』ルールブック」(総合法令出版)の装丁を担当しました。

iPhone5も発売になりましたが、ケータイはもはや電話というよりもパソコンですね。
子どもにケータイを持たせる親も多いと思いますが、便利なツールもネットいじめや高額請求など危険もいっぱいです。
この本はケータイに潜む危険と、それに対処して子どもを守る方法について書かれた本です。

子どもとケータイについては、社会学的な本や研究者が書いた本が多く、子どもを持つ親の不安に応えるようなものは少ないようです。
この本はまさにそうしたタイプの本で、それをはっきりと表すために子どものイラストをあしらい、優しく手にとりやすい雰囲気にしあげました。

イラストは編集者のオーダーで佐藤明日香さん。
少し年長の中学生くらいの絵も描いてもらったのですが、こちらが採用。
ラフでは少しくすんだ色使いだったのですが、明るくすっきりとした色に修正してもらいました。

今回はカバー以外の用紙をエコジャパンRでまとめました。

カバー:MTA+ -FS *マットPP加工
オ ビ:エコジャパンR/雪
表 紙:エコジャパンR/雪
見返し:エコジャパンR/うすくさ

2012年9月24日月曜日

『まるごと一冊! 東京の地名の由来』


こちらは装丁を担当した、刊行されたばかりの
浅井建爾=監修『まるごと一冊! 東京の地名の由来』(自由国民社)です。

タイトル通り東京の地名の由来について書かれた本。
地名のトリビアだけではなく、付近の見所や、地名の由来にちなんだ場所の案内が載っています。

中高年の男性中心の「歴史マニア」向けではなく、散策を楽しみながら歴史に親しむライトユーザー(?)層に向けた作りです。散策の途中でも見やすく明るい本文レイアウト地名ごとに細かく分かれ、地図や写真も豊富です。(今回、本文デザインは担当ではありません)
さわりだけ書かれている地名の由来も多いですが、そのほうが気軽に読めていいです。
詳しく知りたくなったら調べる方法はいくらでもあるし。

すごいと思ったのは、東京のすべての市町村のことが書かれていること。
23区や多摩地域だけでなく、小笠原など島についても載っています。

自分の街の近くのことも早速見てみました。
三軒茶屋の由来は有名なので特に驚きはないのですが、用賀は「ヨガ」から、代田は「ダイダラボッチ」と関係しているとは!

そのほか難読の地名など、地理や地名に関するコラムもあって楽しめます。




装丁も歴史マニア向けの重厚さは排し、女性も手に取りやすい明るい雰囲気に仕上げました。
「東京」といえば…ということで浅草寺の写真をカバーに使用。
東京タワーというのもいいのですが、スカイツリーができましたからね…
オビは付けずにキャッチコピーなどはカバーに刷り込みました。

東京に住む人にはもちろん、地名にちょっとだけ興味のある人にも楽しめる本です。
散歩のお供にぜひどうぞ!


2012年9月23日日曜日

『課長は絶対「いい人」になってはいけない! 』



内田和俊=著『課長は絶対「いい人」になってはいけない! 』(すばる舎)の装丁と本文デザインを担当しました。

タイトルだけ見るとちょっと過激ですが、「しかる・ほめるを上手に使いわけるストレスフリーの部下マネジメント」というサブタイトルで分かりやすくなります。
優柔不断で八方美人の「いい人課長」ではなく、必要ならば辛口なことも言う「悪人課長」(部下にとっては)を目指すという本です。悪人課長はあえて悪人になる「偽悪課長」なのですが、比較のために本当にダメダメな「性悪課長」というのも登場します。

装丁は、濃いめの紺色のオビの背を高くして、外したときにスッキリしたブルーグレーのカバーが見えるようになります。



装画は「没ラフ園」というサイトで知ったサタケシュンスケさんに依頼しました。
どちらかというと普段はカワイイ絵を描く方なのですが、
『心理学者が教える 思いどおりに人を動かすブラック文章術』の装画を見て、悪人課長を描いてもらおうと決めました。

最近は管理職の年齢が下がっているそうで、課長といっても30代から40歳そこそこのイメージです。昔の管理職イメージとはかなり違うんですね…
何パターンもラフを見せてもらった中から、こちらの絵が採用になりました。