2015年4月22日水曜日

装丁展のこれまで<2> カヴァーノチカラ展(2006)A

カヴァーノチカラ展DM(デザイン:小林真理)


装丁展のこれまで<1>からつづく)

初めて個人で装丁展を開いたのは2009年の7月。

その前にまず、ぼくの展示も含めてさまざまな装丁展に影響を与えた「カヴァーノチカラ展」を振り返ってみよう。
これがなければその後の装丁展はなかったと言ってもいい。

さかのぼること3年、2006年のこと。

そのとき所属していた日本図書設計家協会(以下図書設計)では、大規模な展示会を企画していた。
図書設計は装丁に関わる仕事をしている人々(主に装丁家と装画家)が集う団体。紙やインクなど本に関するものを扱う会社も賛助として加盟している。年に1、2度、会員たちの仕事での装丁作品を集めて展示会を開いていた。

その年は日本橋にあるDIC COLOR SQUAREという大きな展示会場を押さえ、せっかくなのでそれに合わせてオリジナルの企画展(仕事の作品展示ではなく)にしようということになった。

しかし会場は今までにない大きさで、資金も人員も時間も足りなかった。オリジナル企画展は未経験だったということもあり、なかなかいい企画が立たずに時間だけが過ぎていく。次第に手詰まり感が漂い始めた。
そこで担当の委員会だけではなく、他の委員会も駆り出し臨時の実行委員会を作り、アイデアを出しあうことになった。

ぼくも当時、運営委員のひとりとしてその会議に出る予定だった。
会議の前に、カフェで出版委員長のコジマさんたちと雑談をしながら、ひとつのアイデアを話してみた。
「既存の本に架空のカバーをみんなで作って展示する」というものだ。
ポイントは、「装丁」にフォーカスすること。
テーマは1冊の本だが、それをさまざまな装丁で展示することで、1冊の本が装丁ひとつでちがった表情になることを表現できる。装丁の協会なのだから、装丁を打ち出すのがベスト…といえば聞こえはいいが、単純にひとつのテーマでいろんなひとの装丁を並べて見てみたかったのだ。
同じ本をあの人やこの人は、どんな風に装丁するんだろう?

幸いその人員は豊富にそろっている。
資材も賛助会員の協力でなんとかなるんじゃないか。
ほかに妙案はなく、コジマさんは
「あ、いいじゃん、ウチの委員会からはそのアイデアを出すってことで」とほっとした様子でコーヒーをすすった。

そこで会議でその案を話してみた。
みんな少し考えて
「それなら印刷は賛助会員に協力してもらって」
「カバー用紙も提供してもらえるだろうか」
「束見本はどうする」
…とその案について話が弾んでいった。

実際のところ、絶対に実現しようとか、実現できると思って話したわけじゃなく、ただの思いつきだったのだが、そのようすから、おお、これはひょっとすると…とワクワク感がわいてきた。ほかのメンバーも、だんだんこれでいけるんじゃないか、という雰囲気になってきた。

そしてそれは、11月に実現したのだ。
カヴァーノチカラ展はここからスタートした。

 *カヴァーノチカラ展詳細はこちら→SPA「カヴァーノチカラ」

装丁展のこれまで<3>につづく)

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