カヴァーノチカラ展のために折原が制作したカバー。上は『二十億光年の孤独』(写真も)、下は『木を植えた人』(絵:山本祐司)
(装丁展のこれまで<2>からつづく)
カヴァーノチカラ展は、時間がない中、特急で進んでいった。
「カヴァーノチカラ」という展示名は、のちに会長になるミヤガワさんが名付けた。
最終的には、ジャン・ジオノ作『木を植える人』と谷川俊太郎作『二十億光年の孤独』の2冊がテーマとなり、50人の装丁家と41人の装画家が100冊の本を制作することになった。
展示什器は会員の知人の建築家が、再生処理のしやすいダンボールで制作してくれた。
カヴァーノチカラ展目録。デザイン:小島トシノブ/カバービジュアル:小林真理
来場者からの反応もよく、面白かったという声をたくさん聞くことができた。ふつうは何パターンもの装丁を一度に目にすることはなく、新鮮に感じてくれたようだ。
装丁家・装画家のほうも一般の人の反応をダイレクトに受け取ることはあまりなく、そうした声を聞くのが楽しみだった。
仕事ではない装丁を作るのは新鮮な喜びだったし、同じ本なのにこんなにも違う印象になる、ということを目にすることができたのもよかった。
思いついたとしても、それだけでは実現はできなかっただろう。このときの実行委員会の強力なマンパワーがあればこそあちこちから協力を得ることができたのだと思う。
デザインジャーナリストの臼田捷治氏は、展示に寄せた文章の中で
「いい意味での〈青っぽさ〉を律儀なまでに守っている協会らしい」企画だ、と書いている。
たしかにプロっぽい企画ではない。それを成立させたのは、逆にプロがてらいなくやったからこそではないだろうか。同業者の集まりがとても心強く感じられた。
そして図書設計は2008年に続編となるカヴァーノチカラ2「箔力展」という展示を行い、その後も「手塚治虫を装丁する」「製本ノチカラ」などオリジナル装丁展を続けていく。
2012年に図書設計が開催した「東京装画賞」も(コンペではあるけれども)オリジナルのカバーを制作するという点を考えれば、この流れの中にあると言ってもいい。
それだけ波及効果があったということだろう。
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